2018年4月27日
WHO西太平洋地域の人々は、多くのB型肝炎感染者がおり、(これは)世界の感染者の45%を占めています。その中で、WHOが管轄する西太平洋地域では、長年の取り組みが実を結び、ミクロネシア連邦において、子どもたちのB型肝炎の罹患率を1%未満まで低下させるという地域目標を達成しました。
記事の概要
ミクロネシア連邦(FSM)は、子どもたちのB型肝炎の罹患率を1%未満に抑えたことで、公衆衛生における大きな勝利を達成しました。FSMは、独立した審査員によって、2017年までにこの目標を達成したことが確認されたことで、WHO西太平洋地域36の国と地域のうちの(目標を達成している)18か国に加えられました。
B型肝炎は、血液やその他・体液を介して拡がるウイルスで、肝臓に障害を起こします。このウイルスは、妊娠中または出産時に胎児に容易に伝播します。ウイルスに曝された新生児のほとんどには、症状がありません。しかし、この感染は、後になって、深刻な問題に発展するリスクを上昇させます。(実に)肝硬変や肝がんを15%~25%の人に引き起こします。(しかし)B型肝炎には安全かつ有効なワクチンがあります。
WHO西太平洋地域事務局長Shin Young-soo博士は、FSM対し、次のように祝辞を述べました。「これはミクロネシア連邦と西太平洋全域の未来に向けた大きな礎となるものです。子どもたちの世代は、B型肝炎が生命を脅かすような肝臓障害の発症に恐れることなく、育つことができるようになります。」
FSMは西太平洋に広がる600を超える島々で構成されています。歴史的にみて、この国にはB型肝炎が広く常在しており、新たな感染のほとんどが乳幼児の間で起きていました。 FSMでは、1988年に全国規模でワクチン接種計画にB型肝炎ワクチンが追加されました。これ以降、このウイルスへの対策には飛躍的な進歩が遂げられました。出生、2か月、4か月、6か月の時点で乳児には(ワクチンが)投与されます。
また、ワクチン接種の強化に加えて、FSMでは他にもさまざまな方法で、B型肝炎の伝播の阻止に大きな進展がありました。妊娠女性にはB型肝炎のスクリーニング検査が行われ、感染者には医療支援と治療が行われ、家族の他の人たちにもB型肝炎のスクリーニング検査が行われました。FSMには乳幼児には慢性B型肝炎の母親からの感染伝播を防ぐために、(このウイルスに対する抗体が含まれた血清から作られる) B型肝炎の免疫グロブリンが供給され、投与されました。
認証の獲得
2016年に、このウイルスへの慢性的な感染率を調査するために、全国の5歳児で最も実態を反映する集団に対しての血清調査が行われました。そこで、WHOのこの地域での目標である2017年までに子どもたちのB型肝炎罹患率1%未満を達成させることと2030年までに公衆衛生上の脅威としてのB型肝炎を0.1%未満まで進展させる世界目標への進捗度が、評価されました。FSMにおいて、この調査を受けた者のB型肝炎の罹患率は0.28%であることが分かりました。
「血清の調査では、予防のためのスクリーニング検査とワクチンの接種、治療などによる厳格な(感染制御への)計画がもたらすべき結果を、私たちが既に目にしていることが確認されました。FSM(の成功)は、他にも同じような状況にある国や地域に激励を与えることができます。」と、WHOのFSM事務所担当者Eunyoung Ko博士は述べています。
ここでも述べられていますが、2030年までにFSMからA型、B型、C型、D型、E型のすべてのウイルス性肝炎を一掃するには、取り組むべきことが残されています。この国の地理的な状況は、国営病院がない離れた島々や地域など、特定の地域で高いワクチン接種率を達成することに課題を残しています。また、接種計画での接種機会を逃した人々に「後追い(catch-up)」予防接種を整備することで、すべての子ども全員がB型肝炎ワクチンの接種計画の機会を取得することにも課題があります。
可能ならばどんなときでも、生後24時間以内に最初の(ワクチン)投与を開始することができれば、適正な時期でのワクチン接種で肝炎を予防することができます。ここ、FSMで、私たちはB型肝炎と戦う上での大きな進展を遂げました。しかし、この感染症は、あまりにも多い感染症の1つに過ぎません。したがって、私たちはWHOからの緊密な協力を得ながら、すべての子どもたちが、確実にこの病気に罹ることのない生涯を送ることのできる機会を与えられるように、取り組みを続けています」と、FSM保健社会担当書記Magdalena Walter氏は述べています。
B型肝炎の脅威
B型肝炎は、世界では2億6,000万人がこの病気に感染し、毎年、B型肝炎に関連する疾患で約800,000人が死亡するという、世界的に大きな健康上の問題となっています。WHO西太平洋地域では、約1億1500万の人々が慢性B型肝炎に感染しており、(これは)世界の感染者の45%を占めています。
慢性B型肝炎感染者10人のうち9人までは、肝疾患を発症するまで感染には気づいていません。この中には、B型肝炎への感染を知らずに、出産児に感染させる可能性のある母親も含まれています。
WHO西太平洋地域の母親10人のうちのほぼ9人が、保健施設で乳幼児を出産します。そのため、各国は、すべての母親にB型肝炎のスクリーニング検査を勧め、その結果、慢性感染した人はそのことを知り、ワクチン接種の重要性を理解し、できるだけ早くに治療を受けることが必要です。
WHOは、各国および支援組織と緊密に連携しながら、新生児でのB型肝炎に対するワクチン接種を推進しています。これは、西太平洋地域2016-2020年におけるウイルス性肝炎の地域行動計画と2016-2021年のウイルス性肝炎に関する世界医療保健部門の戦略の実施において鍵となる要素となっています。
編集者のメモ
B型肝炎の罹患率を1%未満に減らすという地域目標を達成したとされている他の18の国と地域は、アメリカ領サモア、オーストラリア、ブルネイ、中国、北マリアナ諸島、クック諸島、フランス領ポリネシア、グアム、香港、マカオ、マレーシア、モンゴル、ニュージーランド、ニウエ、パラオ、韓国、シンガポール、トケラウ諸島です。
出典